Google Summer of Code 2016 参加記 その1 応募編
今年の4月、Google Summer of Code 2016 に応募し、無事選出された。
それから2ヶ月も経過したが、何も音沙汰なしというのも殺生なので、軽く現時点での参加記を書いてみようと思う。
特に、ウェブ上で検索してもGSoCに参加する日本人のためのアドバイスがあまり見つからないので、そのあたりを頑張っていきたい。
Google Summer of Code 2016 の選考に通過しました!!!!!!!!!!!!!!! #GSoC #GSoC2016
— Il faut vous fuir, (@hakatashi) 2016年4月22日
Google Summer of Code とは
ひとことで言うと、「Googleが主催するリモートワークのインターン」。もう少し詳しく言うと「著名なオープンソースソフトウェアのために3ヶ月間フルタイムでコミットし、報酬として$5500を受け取る、大学生のためのプログラム」である。
長いので略してGSoCと呼ばれることが多い。読み方はよく分からない*1。オープンソースコミュニティの活発化のため、またコーディングに興味を持つ学生の育成のためにGoogleが全面的にバックアップするプログラムであり、2005年に開始されて今年で12回目になる。詳しくは Google Summer of Code の紹介ページを参照してもらいたいが、公式ページには、今までにこのプログラムでなんと5000万行のソースコードが生産されたと書いてある。
GSoCは今年全面的なリニューアルを行い、システムが全面的に刷新されたようだ。ウェブページは殺風景なデザインからマテリアルデザインに切り替わり、ロゴも新しくなった。去年見た時よりもだいぶ分かりやすくなっていて個人的には大歓迎である。
期間は、例年5月中旬から8月中旬にかけての3ヶ月間。これらのコーディング期間に加えて、その前に1ヶ月ほどの Community Bonding Period が存在する。これは米国の一般的な大学の夏休みに合わせたスケジュールである。
プログラムの流れは次の通りである。まず、Googleは学生を受け入れることができるオープンソース団体を募集する。選考でGoogleに承認された団体は学生に取り組んでほしいタスクのリストを予め用意しておき、学生は各団体のそれを読んで自分に合った団体と課題を決める。学生はその内容を提案書(Proposal Paper)と呼ばれる文書にまとめ、自分のやりたいこと、スキル、課題のスケジュールなどを盛り込んで提出する。各団体がそれを読んで選考を行い、無事選考通過した学生には参加する団体から1人か2人のメンターを配属され、全期間を通してメンターの指示と指導のもと、互いにコミュニケーションを取りながら各々の活動を行っていく。全プログラムを無事終了した暁には、総額$5500の報酬金が受け取れるという仕組みである。
例年全世界で5000~6000人ほどの学生がこのプログラムに応募し、1000人あまりの学生が選考を通過して Accepted Students となる。考えてみると応募率は5倍であり結構高いが、マニュアルをよく読んで真面目に提案書を書けばかなりの確率で通過できるのではないかと思われる。
日本人の参加について
GSoCには例年日本人も若干名ほど参加しており、統計情報によると今年は自分も含めて12名参加とのことである。
日本人が参加する際の一番のハードルは、やはり世界の大学との学事暦の違いだと思われる。一般的な9月入学2学期制の大学では春学期が5月に終わるため、そこから3ヶ月間みっちりと課題に取り組めるが、日本の大学では5月は夏学期のど真ん中である。GSoCでは通例週40時間のコーディングが要求されるため、やはり特別な事情がないと日本の大学生が参加するのは難しいと思われる。*2
第二に言語の問題がある。GSoCでは、書類選考やメンターとのコミュニケーションなど、当然だがすべて英語で行わなければいけない。大学生であれば英語はある程度読み書きできることと思われるが、自分も含めてそこまでのコミュニケーションを行う自信はついていないというのが正直なところである。また去年GSoCに応募した友人によると、選考過程でSkype越しの面接を要求され、言葉がうまく出ずにキョドって落とされたという話である。このあたりの選考過程は団体によって異なるが、もし面接を課せられていたら自分も落とされていたかもしれない。
逆に言えば、上の2点さえクリアできれば誰でも参加できる。
コーディング能力はあまり問われない。GSoCにはコーディングレベルに応じて様々な参加形態があり、簡単なタスクから複雑なタスクまで、自分に合った課題を自分で設定することができる。ほとんど初心者に近いような状態でも、学習しながら参加することもできるという話である。
日本はGSoCの本拠地であるアメリカから遠いが、これも問題にはならない。そもそもリモートワークなのでコーディングに地理的な距離は関係ないし、Googleからのいくつかの郵送物は、時間がかかるがちゃんと届く。報酬金はPayoneerを通して支払われ、ちゃんと日本の銀行口座に引き落とすことができる。
タイムゾーンの違いによるコミュニケーションの難しさは若干あるが、今のところ大きな問題にはなっていない。
5月から8月にかけて時間を取れる大学生は、ぜひGSoCに参加してみてほしい。
応募編
Googleの夏は3月から始まっている。GSoCに参加する場合には3月の応募期間中に提案書を書ききり、諸書類と一緒に提出しないといけない。どうせ夏だと思ってぼやっとしてるとあっという間に過ぎてしまうので注意が必要である。*3
そして更に重要なのは、GSoCの公式マニュアルによると、応募期間以前からの活動が最も大事とのことである。提案書はなにも提出する時まで内緒にしておくことはない。提案書を作る前にどういう内容に取り組みたいかということを団体に相談し、フィードバックを受けながら書いていくのが最も良い書き方である。僕はこの文面を見落としていたため若干出遅れてしまったが、読者諸兄にはくれぐれも早め早めの行動を促したい。
僕の場合、応募期間が開始してから団体リストを眺め、得意なJavaScript関連のプロジェクトを探した。自分が知っているプロジェクトに応募するのが一番良いというのは聞き及んでいたことなので、めぼしいところで Mozilla, jQuery, Fedora, ownCloud などが候補に挙がった。
Fedora Project など、どの辺りがJavaScriptなのだとも思ったが、Idea List を見ると、意外といろいろな種類のタスクが挙げられている。このあたりはちゃんと読んでみないとわからないものだと感じた。
迷った末に、jQuery Foundation にある、Internというテストフレームワークの Create a sandbox interface for all Intern tests というタスクに応募することにした。Internというソフトウェア自体はあまり有名ではないが*4、個人的に Software Testing に興味があったのと、リストのだいぶ下のほうにあって誰も応募してないだろうという目論見により応募することにした。
そうと決めたらマニュアル通り開発者に連絡を取り、課題についていくつかの質問をした。そうして得た回答をもとに、提案書を書き進めた。提案書は、自分のやりたいことを明確にわかりやすく、そして誤解のないように書くことを心がけた。特に、取り組みたい課題の解決がなぜ必要とされるのかという点に重点を置いた。このあたりは、開発者とのコミュニケーションを通して得た、「今回は具体的な実装方法に関しては提案段階では考えない」という方針が基となっている。また、先程述べたような日本の大学の事情やタイムゾーンの問題なども、後から辛くならないようにここにしっかり書き記しておく必要がある。
ヒイヒイ言いながら慣れない提案書を書き上げ、最初のアップロードを行ったのが応募期間終了の3日前。期間に余裕がある場合はこの段階で団体側のフィードバックを待つことができるのだが、今回はギリギリだったのでフィードバックを受けることができず、応募期間終了前日に最終提案書を送信した。*5マニュアルも “Submit early” を何度も強調しているように、とにかくGSoCの応募は早めの行動が重要である。読者には同じ轍を踏まないようにしてもらいたい。
I'VE JUST COMPLETED#GSoC #GSoC2016 pic.twitter.com/p5t77R4bfl
— Il faut vous fuir, (@hakatashi) 2016年3月24日
提案書は複数応募することもできるのだが、1個目の提案書を書き上げた時点で完全に疲弊していたし、マニュアルにも「そこそこの提案書を複数作るよりもハイクオリティーな提案書を1個作れ」と書いてあるのでここで切り上げた。
選考通過のメールを受け取るのは、提出から1ヶ月後、4月23日のことである。
「選考通過~Community Bonding Period編」に続く。